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【ブーケ】禁断情事:執事とお嬢様 シナリオ公開(6)


お待たせいたしました!
ドラマCD「禁断情事:執事とお嬢様」のシナリオ公開を更新です☆

今回も正海春人先生が読みやすく、小説風に書き換えてくださってますよ☆

通常版出演

平井達矢/TOSAKA/神月あおい/鞠男.net/笹崎こじろう

ステラワース限定版出演

平井達矢/TOSAKA

連動購入特典出演

平井達矢/TOSAKA/鞠男.net/笹崎こじろう


Part6「一生の恋」

数日経ってもあの夜の出来事が脳裏を過る。
うとうとする私の傍で小林と遠山の声が聞こえていた。あの話を聞くに、小林は私を落ち着かせるために抱きしめたらしい。あんなところを誰かに見られれば小林のクビにだって関わるというのに。
それを顧みずに私を落ち着かせてくれた。優しい温もりと小林の声に私は救われていた。
最初は気恥ずかしくて言えなかったけど、今日こそはと思ってお礼を言うために小林を探している。けれど、今日は姿が見えない。
庭に出ると遠山がちょうど花の世話をしていた。小林の居所を尋ねると父の部屋に向かったらしい。お礼を言って立ち去ろうとすると遠山が私に声をかけた。

「お嬢様、ご結婚の準備は進んでいらっしゃるんですか?」
「……ええ」

あのお見合いの話は当然そのままだ。
将来に思いを馳せるのを止めて、私は言われるまま結婚の道に進んでいる。小林が言った通り、こういう家に育ったからにはある程度の覚悟も必要なのだろう。
けれど結婚しても小林は傍にいてくれる。家のための結婚でも、変わらずに小林がいるなら知らない家に嫁ぐのは怖くない。諦められる。そう言い聞かせていた。
けれど私の返事に遠山は探るような目を向けてくる。

「おめでとうございます、で合ってますか?」
「……わからないわ」
「わからないのに、ご結婚を?」

遠山には隠しても無駄だ。直感的にそう思った。
一度何かを諦めると、全てがどうでも良くなっていて自嘲の笑みも漏れていた。

「……だいたいどういうものが『好き』というものなの? 抽象的すぎるわ」
「『好き』がわからない、か……。そりゃ難しい質問ですね」
「…………」

『好き』がわかれば、もしかしたら本当に愛する人と結婚ができたかもしれない。一方でその気持ちがわからないからこそ、花沢さんとの結婚も出来るのだろうと思っていた。
私が黙り込むと遠山は「仕方ない」と呟いた。

「お嬢様、『好き』とか『愛している』っていう気持ちは意外とわかりづらいものなんですよ。ましてやその対象が身近な相手なら、なおのこと気づかない……」

遠山からこんな話を聞くのは初めてだった。けれど遊び人だという遠山だからこそ、私の知らないことを、男女のことを教えてくれる気がした。だから私もここぞとばかりに質問をした。

「じゃあ『好き』だったとしても気づけないまま終わるの?」
「そうですね。そういう場合は、失って初めて気づくものだと思います」

痛んだ花に鋏を入れながら遠山は話を続けた。

「例えば、その人が突然いなくなったり、突然自分から離れて行ったり……」
「それって、ただ寂しさからくるものじゃなくて?」
「勿論ただの空虚感で勘違いする可能性もありますけど、それはその相手を想う気持ちですぐに喪失感に変わります」
「……難しいのね」
「はい。『恋』に正解はありません。その相手がどんな人なのか、それによって自分の動き方も変わっていきます」
「私、永遠に『恋』には巡り合えそうにないわね」
「そうでしょうか。意外とすぐそばに、一生の『恋』があるかもしれませんよ」

一生の恋。
とても素敵な響きだった。叶うなら私もそんな恋の末に結婚がしたかった。今更そんなことを思ってもどうにもならないのに。
私は切り替えるように笑って遠山にお礼を言い、父の部屋に向かった。


本日のシナリオ公開はここまで☆
次回更新をお待ちください☆

※製作上の都合等により、実際に収録される内容とは異なる場合があります。予めご了承ください。
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