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【ブーケ】禁断情事:執事とお嬢様 シナリオ公開(5)


お待たせいたしました!
ドラマCD「禁断情事:執事とお嬢様」のシナリオ公開を更新です☆

今回も正海春人先生が読みやすく、小説風に書き換えてくださってますよ☆

通常版出演

平井達矢/TOSAKA/神月あおい/鞠男.net/笹崎こじろう

ステラワース限定版出演

平井達矢/TOSAKA

連動購入特典出演

平井達矢/TOSAKA/鞠男.net/笹崎こじろう


Part5「怒りは温もりで沈められて」

食事会から帰宅すると、ほとんど口を利かなかった。入浴や就寝前のお茶の時間でさえ、ただ空返事をするだけで小林が何を言っていたのかも覚えていない。
大きな観音開きの窓を開けて、プライベートバルコニーに出ると満月が私を迎えた。こんなに綺麗な月夜なのに心は闇にくるまれたようで、自分の中に遣る瀬無い悔しい気持ちが生まれていた。今誰かと顔を合わせたら八つ当たりをしてしまう。そんな気がして私は落ち着くまでただ夜風に当たっていた。
その時、微かに扉をノックする音が聞こえた。

「失礼いたします」

小林だ。
眠る時間になってもサイドデスクの電気が消えないのを目ざとく見つけたのだろう。部屋に入ってくるなり、すぐにバルコニーまでやってきた。

「お嬢様、どうされたのですか? こんな時間にバルコニーに出てはお風邪を召されますよ。ご帰宅されてから随分と塞ぎ込んでおいでですが……何かあったのですか?」
「……騙されたの」

私はようやくそれだけ呟いた。深い溜息と一緒に、自然と出てしまったと言う方が正しいかもしれない。
私の言葉に小林が不思議そうに眉を寄せた。

「騙す? 誰が誰を騙したというんですか?」
「今日のお父様との食事、お見合いだったわ」
「……やはり、そうでしたか」
「……もしかして、気づいてたの?」
「申し訳ございません。確信が持てませんでしたので……」
「どうして好きでもない人と結婚なんか……」
「……心を通わせた相手との結婚を望まれるのは当然だと思います。しかし、あなたのお立場というのは時として、それが難しいものにもなってしまうんです」

人とは嫌な生き物だということを私は初めて思い知った。一つ納得いかないことを口にすると次から次へと不満が溢れてくる。誰かにこんな風に腹を立てている自分も許せなかった。誰かに腹を立てられるほど、ましてや父に文句を言えるほど私は立派な人間じゃない。
わかっているのに、止まらなかった。

「わかってるわよ!」
「お嬢様、落ち着いてください」
「お父様は私を騙したのよ……!」
「お怒りもわかります。ですが、旦那様はいつもお嬢様のことを思っていらっしゃいます」
「お父様も、小林も、わかった風に言うけど何も私のこと理解してないわ!」

こんなに大声を出したのは初めてだった。けれどもっと初めてのことが自分の身に起きていて、私は一瞬で怒りを忘れていた。
小林が私を抱きしめていた――。


本日のシナリオ公開はここまで☆
次回更新をお待ちください☆

※製作上の都合等により、実際に収録される内容とは異なる場合があります。予めご了承ください。
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