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【わるまほ】第1弾:眠れる森の美女 シナリオ公開(1)

おとぎ話の「もしも」の結末を描くわるまほシリーズ、第1弾は『眠れる森の美女』。
悪い魔女の呪いによって眠ってしまった姫を、王子がキスで目覚めさせる――そんなオリジナルの結末をアレンジしてお届けします。

当作品の魔法使いは、赤子の頃からあなたに仕える側近。兄代わりとしてあなたを見守り続けてきた彼には、ひた隠しにしてきた秘密が――……。

今回は物語の導入となる冒頭部分をまるっと公開!
CDでは「姫(あなた)」視点で物語が進行しますが、こちらでは特別に「魔法使い」視点を公開します。 ※台詞はCDと同じものになります。

▼▼▼

『昔々、とある小さな王国になかなか子宝に恵まれず悩む王様と王妃様がおりました。このままでは跡継ぎがいなくなってしまう……困り果てるふたりに、やっとひとりの女の子が。
姫の誕生を喜んだ王様は、城でお祝いの式典を催しました。式典には、その実力を認められた魔法使い十二人が招待され、それぞれひとつずつ、姫に魔法の贈り物をしました。ある者は美貌を、ある者は清らかな心を……。
そして最後の一人が魔法を掛けようとしたその時、会場が突然ざわざわと騒がしくなりました。招待されなかった十三人目の魔女が、怒って城へ乗り込んできたのです。
混乱の最中、姫は魔女の呪いを受けてしまいました。「針に刺されると死んでしまう」という恐ろしい死の呪いを。
まだ贈り物をしていなかった十二人目の魔法使いが、それを「針に刺されると100年の眠りにつく」と上書きしましたが、王様は心配でたまりません。ただちに国中の糸車や針を集め燃やすよう、命令しました。そして姫を城から一歩も出さず、大切に大切に育てたのです……』

「…………入るぞ」

部屋に入ると、窓辺のソファーに彼女の姿を見つけた。
思った通りの拗ねた顔。呆れながらも声を掛ける。

「はぁ……いつまでそうやって拗ねてる気だ? 窓の外を睨みつけていたって、外には出られないぞ。……それとも、飛び降りでもする気か?
お前の部屋高さを考えたら、たとえ外に出られても命があるかどうか怪しい。馬鹿なことは考えない方がいいんじゃないか」

からかいを織り交ぜて諭してみても、表情は変わらない。
『城の外に出たい』、彼女の願いは理解していた。でも、それを叶えてやることが出来ない以上、こうやって言葉でなだめるしかない。

「だから、そんな膨れっ面したって無駄だよ。……門番に聞いた。また城門で一悶着起こしたそうだな。隣国へ行く国王と王妃の見送りついでに、どさくさに紛れて自分も出ようとしていたとか……。
もう毎度のことなんだからいい加減懲りろ。はいそうですか、とお前を外出させるほど門番たちは無能じゃない。
それにあいつらの立場も考えてやれ。万が一にでもお前をこの城の外に出したら、国王の逆鱗に触れて一発で処刑だ」

優しい父親がそんなことするはずない、彼女は否定する。

「そんなことしない、なんて言い切れるのはお前が知らないからだよ。王様は姫様を溺愛していらっしゃる。愛娘に血なまぐさい処刑話を聞かせたくないだけだ」

そう言ってもいまいちぴんと来ていない様子で首を傾げる。
怒るだろうから口にしないが、親が親なら子も子だ。
呆れつつも話を続けるため、彼女の隣に座る。

「……で、そんな親バカな国王は最近あることに頭を抱えているそうだ。たとえば、愛娘が毎日顔を合わせるたびに外出したいと言ったり、今日みたいに実際に抜け出そうとしたり……。
この間も真剣に相談されたよ。親離れだろうか、それとも反抗期だろうかってな。自分がいくら言っても聞かないから、兄代わりのお前からも言ってやってくれと頼まれてる」

またなの、と煩わしそうに顔をしかめる彼女。
生まれた時から過保護に育てられてきたせいか、自立心が強く、最近は特にこうしてあからさまに大切に扱われることを嫌っていた。

「はいはい……そういうところも含めて、過保護に扱われるのが嫌なんだよな。
お前の気持ちは、一応理解してるつもりだ。……実際、生まれてから十八年間ずっと城の中、というのも窮屈だろうな。出してやりたいとも思うんだが……そう簡単に叶えてやれる話じゃない」

呪いのことを心配してるのかと、彼女が訊ねる。
その身に掛けられた『100年の眠りの呪い』。

「そうだな……もちろん、呪いのこともある。だが呪いがなくても、お前は国王と王妃の一人娘で、大事な跡継ぎだ。城という狭い世界にいる限りは守ってやれることも、外の世界では約束できなくなる。
俺も、お前を守るための側近として仕えている以上、お前の身に危険が及ぶようなことには賛成できないんだ。……聞き分けてくれないか?」

優しく言うと、彼女は黙ってしまった。
それはそうだ。

「……ま、そこで素直に頷けるなら、最初から外に出たいなんて言わないよな」

分かってるならどうして言うのと、恨みがましそうに彼女が言う。
あまりに素直な反応に思わず笑ってしまう。

「ごめんな。……やっぱり分かるようになるものだな、十八年も仕えると。側近と言いつつ、護衛だの教育係だの、役割が多すぎて自分の立ち位置を忘れそうになるが。……ああ、ついでに兄代わりっていう役割もあったか」

彼女の頭を撫でようと手を伸ばす。
子どもの頃からやっていることで、これはもう癖のようになっていた――……

▲▲▲

トラック1より抜粋してお届けしました。
今回のシナリオ公開はここまで!
次回の更新は、【 2月 5日(木) 】を予定しています!
お楽しみに☆

※製作上の都合等により、実際に収録される内容とは異なる場合があります。予めご了承ください。

2015年3月25日発売予定
わるい魔法使いに姫が略奪されてしまいました
第1弾:眠れる森の美女編

出演:村上たつや
ご予約はこちら ステラワース限定版のご予約はこちら

2015年5月27日発売予定
わるい魔法使いに姫が略奪されてしまいました
第2弾:シンデレラ編

出演:櫻井真人
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2015年7月29日発売予定
わるい魔法使いに姫が略奪されてしまいました
第3弾:白雪姫編

出演:柊三太
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